ち、白雲は、鈍重な形をして画框《がわく》を腋《わき》にかい込んでいる。二人ともに眼は海上遠く注がれながら、足は絶えず砂浜の上を歩いている。
 田山白雲は房州に来て、海を見ることの驚異に打たれてから、しきりに海を描きたがっているらしい。
 白雲がいう。
「いや、水の色にこうまで変化があろうとは思いませんでした」
「線と点だけで、この変化が現わしきれますかね?」
と二人が相顧《あいかえり》みて立つ。
「左様――谿谷《けいこく》の水と、河川の水とは、東洋画の領分かも知れませんが、海洋の水は、色を以て現わした方が、という気分がしないでもありません」
「線を以て、色を現わし得るというあなたの見識が動き出しましたか?」
「そういうわけではありません……つまり、淡水《たんすい》と鹹水《かんすい》との区別かも知れません。淡水は、線を以て描くに宜《よろ》しく、鹹水は、色を以て現わすのが適当という程度のものか知ら……」
「一概には言えますまい――しかし、東洋画で、海を描いて成功したものはありませんですか?」
「ないことはないでしょうが、私はまだ不幸にしてブッつかりません」
「水の変化が、多過ぎるからでしょ
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