それはまあ安心です……誰か様子を見に行って来ては……」
「そうですね……」
といったけれども、誰も急に立とうとする者はありません。まず立ち上るべきほどの人でも、お雪の占《し》めている柳の間までは、長い廊下の、暗いところを伝い伝って、三階まで行かなければならぬおっくうさが、先に立ったものと見える。
 また物にせつかない連中は、来る時には招かずとも来る人、来ないのは、何かさしさわりがあるのだろう、招きに行って、迷惑がらせるにも及ぶまい、という遠慮もあってのことらしい。
 強《し》いて呼び迎えて来なければならぬというほどのことはないが、お雪がいないため、この一座の淋しさは、他の何者でも埋められないと見えて、噂《うわさ》はやっぱりお雪のことのみに集まる。
「お雪ちゃんは、昨晩泣いていましたよ」
「え、泣いていましたか?」
「夜中に、泣いていました」
「では、急病でも起ったのか知ら?」
「わたしも、そう思いましたから、暗い廊下を半分ばかり駈けつけてみましたが、急にやめました」
「どうして?」
「泣いていたお雪さんの部屋に、人が一人いるようですから……」
「誰ですか、あの久助さんですか、そういえば
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