まいます、衣類はどなたでも御着用なさいませ、琵琶はおそらく私に限って、破れた一面の琵琶でも、私にお授け下さればこそ、その用をなすというものでございます……その琵琶だけは……とこう申しましたのが返す返すも、私の未熟ゆえでございます。すでに曾無一善《ぞうむいちぜん》の裸の身と申しながら、またも一枚の着物を惜しみ……一面の琵琶を惜しむ、浅ましい心、それが無惨に蹂躙《ふみにじ》られたのは、もとよりそのところでございます。まだツベコベと文句を並べるか……察するところ、貴様はこの月琴の胴の膨《ふく》らんだところへ、路用を隠しておくのだな、木にしては重味がありすぎる……大方、この胴の中へ、小判でも蓄えておくのだろう――と言ってその琵琶をメリメリと踏み壊しておしまいになりました。とかく、私の言うことが癪《しゃく》に障《さわ》ったものでしょう。それと、せっかく踏み壊して見た琵琶の胴の中にも、一文の蓄えもあろうはずはありませんから、その癇癪《かんしゃく》まぎれに、私の身を裸で一晩涼ませてやるといって、この通りの始末でございます。いいえ、それだけのことを覚えてはおりますが、別段、怪我といってはございませぬ、縛られる前に、蹴られたとき気が遠くなりました、それまででございます。いいえ、何とも思ってはおりません、さのみ悲しいとも思ってはおりません、あなた様に助けられても、さのみ嬉しいとは存じません……ああ、私も今までずいぶん苦労も致しましたし、命を取られるような目に逢ったことも幾度もございましたけれど、本当に裸の身にされたのは今宵が初めてでございます、この肉身一つのほかに、持てる物をことごとく奪われたのは今回が初めてでございます。いいえ、奪われたのではございません、持つべからざるものを持つが故に、召し上げられたのでございます……仏があの人の手を借りて、私の劫初《ごうしょ》以来の罪業《ざいごう》を幾分なりとも軽くしてやろうと思召《おぼしめ》して、かりに私の身から一切の持物を取っておしまいになりました。しかし、着物は剥ぎ取られましても、この心にはまだまだ我慢邪慢の膿《うみ》のついた衣が幾重《いくえ》にも纏《まと》いついておりまする。それを一枚一枚脱ぎ去って、清浄無垢《しょうじょうむく》の魂を見出した時に、初めて、その魂に着せる着物が恵まれねばなりませぬ、そのとき恵まれた着物のみが、本当に私の着物で
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