に立つと、富士、浅間、甲斐《かい》、武蔵、日光、伊香保などの山があざやかに見える。
原の中で米友が草鞋《わらじ》の紐を結び直しました。
十一
こうしてある者は南船し、ある者は北馬して江戸の中心を離れる時、例の三田四国町の薩摩屋敷ばかりは、いよいよ四方の浪人の目標となって、ここへ集まるものが絶えません。
今日も数十人の者が一席に集まって、群議横生のところ。
いよいよ甲府城を乗っ取るの時機が熟したという者がある。
さて、甲府を定めて後は、天険《てんけん》によって四方を攻略すること、武田信玄の如くあらねばならぬというものもある。
それに備えるの要害を利用すること、北条氏康《ほうじょううじやす》の如くでなければならぬというものもある。
さてまた一方には、相州|荻野山中《おぎのやまなか》の陣屋を焼討して、そこに蓄えられた武器と、軍用金を奪い取るは、朝飯前だと豪語する者もある。
他の一方には、関東の平野を定めるにはやはり平野から出づるのがよろしい、それには野州の野に越したものはない、栃木の大平山《おおひらやま》、岩舟山《いわふねさん》、出流山《いずるさん》等は
前へ
次へ
全322ページ中74ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング