」に傍点]、じゃあるめえな」
「じょうだんいいなさんな」
「五貫ばかり売ってもらいてえ」
罷《まか》り出でたのは乗合いの中の素人《しろうと》にしては黒っぽく、黒人《くろうと》にしては人がよすぎる五十男。
「合点《がってん》だ、さあ五貫……」
貸元が景気よくコマを売る。
「丁が余る、丁が余る……いかがです、旦那、負けときますぜ、やすめ[#「やすめ」に傍点]を一つお買いになっては……」
「へ、へ、へ」
前のよりはいっそう人のよかりそうな、純乎《じゅんこ》たる素人が、ワナを眼の前につきつけられて、まんざらでもない心持。
こうやって彼等の景気は増すばかりで、心あるものの気持は苦々《にがにが》しくなるばかりです。
暫くしている間に、最初にしたり[#「したり」に傍点]面《がお》をして出た半黒人《はんくろうと》も、まんざら[#「まんざら」に傍点]でもない心持の純素人《じゅんしろうと》も、グルグルとグループの中へ捲き込まれてしまうと、中盆《なかぼん》が得意になって、
「運賦天賦《うんぷてんぷ》のものですから、本職だって勝つときまったものではなし、ドコへ福がぶっつ[#「ぶっつ」に傍点]かるかわ
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