も[#「にも」に傍点]、いいものはいい、悪いものは悪いとうつりますよ」
池田良斎が答えると、俳諧師は驟雨《にわかあめ》にでも逢ったように身顫《みぶる》いをして、
「では一茶の句集でもごらんになったことがございますか」
「あります、あります、『おらが春』を読みましたよ」
「おらが春――たのもしい、あなたが、そういう方とは存じませんでした」
俳諧師は着物の襟をさしなおして恐悦がりました。仲間《ちゅうげん》みたような風采をしていた良斎の口から、一茶を褒《ほ》められて、自分の親類を褒められたような気になったのでしょう。有頂天《うちょうてん》になった俳諧師は、
「おらが春を本当に読んで下されば、一茶の生活と、人間と、発句《ほっく》の精神とはまずわかります、わかるにはわかりますがね、人によってそのわかり方の違うのはぜひもありません。あなたは、一茶という人間を、どういうふうにごらんになっていますか、それを承りたい」
「そうですね」
池田良斎がこの質問に逢って、少しく首を捻《ひね》りますと、俳諧師はそれにかぶせて、
「どうですな、一茶の偉いというのは、太閤秀吉の偉いのとは違いましょう、日蓮上人の
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