偉さとも違いましょう、また近代のこの信濃の国の佐久間象山の偉さとも違いましょう、一茶の偉さは、英雄豪傑としての偉さではありませんよ、人間としての偉さですよ、信濃の国の名物中の名物は俳諧寺一茶ですよ……いや、信濃の国だけではありません、この点において一茶と並び立つ人は天下にありません、一茶以前に一茶無く、一茶以後に一茶なしです……」
 俳諧師の言葉に熱を帯びてきました。
 一方の熊狩りはどこへ行ったか姿が見えません。かれらは一頭の熊のために、一頭の熊が与うる生活の資料のために、血眼《ちまなこ》になっているから、山を眼中に置かない。
 こちらは歌人――とは断定できないが――と俳諧師とは、古人を論じて来時の道を忘るるの有様です。
 しかし、どうやら間違いなく二人は白骨の宿へたどりつくと、池田良斎が東道《とうどう》ぶりで、炉辺に焚火の御馳走を始めました。
 ところで、この俳諧師の、俳諧寺一茶に対する執着は容易に去らない。
「古人は咳唾《がいだ》珠《たま》を成すということをいいましたが、一茶のは咳唾どころじゃありません、呼吸がみな発句《ほっく》になっているのです、怒れば怒ったものが発句であり、泣
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