泉に温《ぬく》もって参らばやとやって参りました」
「それは、それは」
 熊狩りの一行は、この俳諧師の出現に機先を折られた様子。
 ともかく、この俳諧師一人をノコノコと平気で歩かせてよこした方の道には、とうてい熊はいないと鑑定しなければならぬ。
 そこで熊狩りの一隊は、陣形と策戦の方針を一変しなければならぬ。
 獲物中心の連中が、ガヤガヤとその陣形と策戦の方針を語り罵《ののし》りながら、方向転換をやっている時、見学の池田良斎は、やや離れて後からくっついて、新たに出現した俳諧師を生捕ってしまいました。
「あなた、俳諧をおやりなさるのですか」
「へ、へ、へ、少しばかり……」
 年の頃は、まだ三十幾つだろうが、その俳諧師らしい風采《ふうさい》が、年よりは老《ふ》けて見せた上に、言語挙動のすべてを一種の飄逸《ひょういつ》なものにして見せる。
「信州の柏原の一茶の旧蹟を尋ねて、只今その帰り道なのでございます」
「ははあ、なるほど、一茶はなかなか偉物《えらぶつ》ですね」
「え」
といって俳諧師は眼を円くし、
「失礼ながら、あなたにも[#「にも」に傍点]一茶の偉さがおわかりですか」
「それは、わたしに
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