らしい。
宿の留守居連中も集まって来て、諦められない猟師を、いっそう諦められないものにする――というのは、熊一頭を得れば一冬は楽に過せる、山に住む人の余得として、これより大きいのはない、それを取外《とりはず》した猟師のために、やれやれ気の毒なことをしたと悔みを言うものですから、猟師がいよいよ諦めきれなくなりました。
「ちぇッ、もしかすると、そこいらに斃《たお》れていやがるか知れねえ、もう一ぺん出直してみよう」
この連中にとっては、自分たちの生命の危険よりは、熊一頭が惜しいように見える。猟師は、そこでふたたび錆槍《さびやり》をかつぎ出しました。こうなると力をつけた連中も気を揃えて、それに加勢をすることになると、最初には、たしなめた池田良斎すらが、この機会にその熊狩見物を面白いことにして、同行をすることになると、万葉集の講演が、そのままお雪ちゃんだけを残して、熊狩隊に変ってしまいました。
そこで宿に秘蔵の、鉄砲一挺も持ち出されることになる。この鉄砲とても、いつぞや、塩尻峠のいのじ[#「いのじ」に傍点]ヶ原で持ち出された業物《わざもの》と、弟《てい》たり難く、兄《けい》たり難い代物《し
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