を敵と思い込んで、抜くという知恵がなく、かえって自分で抉《えぐ》って、自分で死ぬという。
熊の襲来で、万葉集の講義が一段落となりました。
そうしてこの猟師の報告によって、件《くだん》の熊の運命について、おのおのその見るところを語りはじめました。ある者は、熊というものは到底、刺された槍を抜き取るだけの知恵のあるものではない。浅かれ、深かれ、槍を立てた以上は、自分で抉って、自分で傷を深くするだけの器量しかないのだから、これは当然どこかに倒れているに相違ないと言う。
ある者はまた、それも程度問題で、突き方が非常に浅ければ振りもぎってしまうし、木の根や岩角に当って、おのずから抜け去ることもあるのだから、無事に逃げ去ってしまったろうという。
どっちにしても、もう少しその運命を見届けて来なかった猟師に落度がある――という結論になって、猟師が苦笑いする。
池田良斎はそれを聞いて、
「とにかく、熊の下腹まで行って槍を突き上げるとは非常な冒険だ、へたに運命を見届けているより、獲物《えもの》は外《そ》れても、逃げて帰ったのが何よりだ」
と言いましたけれども、猟師は、なかなか諦《あきら》めきれない
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