あちらこちらとさがし廻っている様子が、なんとしても穏かには響きません。
「お内儀さあ――ん……」
聞いていると、どこまでも嫉《ねた》みを持ってものを追い求める声です。
「ねえ、先生……」
後家さんは、半ば恐怖の色を以て、竜之助にすがるように、
「あれは、うちの浅公ですよ……御存じでしょう、わたしの雇人ですが、このごろ、どうしたものか、わたしを恨んでいます……恨んではいるけれども、口に出しても、手に出しても、何もすることはできない意気地なしなんですが、ああいう意気地なしが思いつめると、また何をしでかすかわかったものではありません……この間の晩も……」
といって、後家さんの唇の色が変って、舌がもつれました。
「ねえ、先生、この間の晩、夜中に、どうも変ですから、ふいに眼がさめて見ますとね、あの野郎がわたしのこの咽喉《のど》をおさえて、こうして……わたしを絞めようとしていたんですね、吃驚《びっくり》して、起き直って、わたしが、とっちめてやりますと、泣いてあやまりましたが、あんなのがかえって怖いのかも知れません。ですから、先生、ぜひ、あの護身の手を一つ教えておいてくださいまし、もし、不意に咽
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