ので、不安が不安を追っかけるように、後家さんは竜之助に促《うなが》しました。
けれども、何としてか、竜之助は答えることなしに、少し歩みを早めて、ずんずんと後家さんより先に立って木立の中深く進んで行くものですから、後家さんは、肪《あぶら》ぎった大きな身体《からだ》をそれに引きずられるように、追いすがるように歩いて、
「あんまり奥へおいでになってはいけません……お池の方へ戻りましょうよ」
その時、沼のあなたに当って、谺《こだま》を返す一つの呼び声がありました、
「お内儀《かみ》さん――お内儀さん、どちらへおいでになりました」
それは林を隔て、沼を隔てて呼ぶ浅吉の声にまぎれもありません。
この声を聞くと後家さんが、いまいましそうな、また、いつになく怖ろしそうな顔になって、声のする方へ向き直ったけれども、そちらへ足をめぐらそうとはしません。
机竜之助もまた、その時、ずんずんと進んでいた足をとどめて立っていると、
「お内儀《かみ》さん――お内儀さん、お迎えに参りましたよ、お一人歩きをなさると、お危のうございますよ」
甲《かん》に高い浅吉の呼び声は、感情もまたたかぶって、沼のほとりを、
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