、今日はお一人でよく道がおわかりなさいましたこと。鐙小屋においでになっても詰りませんから、このお池の周囲《まわり》を歩いてごらんになりませんか。いいお天気で、ホカホカとして春先のような心持が致しますね。このお池を廻って御一緒に宿へ帰りましょう。それともこんなお婆さんと一緒ではおいや……」
竜之助でなくてもゾッとしましょう。
無名《ななし》の沼のほとりを、肪《あぶら》ぎった後家婆さんと、竜之助とは、ブラブラと歩いて行きました。
「ねえ、先生、あなたはこの間、お雪ちゃんに護身の手というのを教えておいでになりましたね、あれを、わたしにも教えて下さいましな」
「お前さんが習ってなんにする」
「覚えておいて害にはなりますまい、いざという時……」
「そうです、覚えておいて害にはなりますまい。けれども、あれは若い娘たちのためにするものです。若い時分には、どうも危険がありがちだから、もしこういう場合には、こうして手を外《はず》すとか、この場合にはこうして敵を突くとか、二ツ三ツの心得を、お雪ちゃんに話してみせただけのものです」
「若い時分に限ったことはございますまい、誰だって、あなた、いつ、どういう
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