はお雪の案内で、そこまで散歩を試みたことがあるのです。さればこそ、今日はこうして手放しで、山谷の間を、ひとり歩きができるということになっているのでしょう。
白昼に見るせいか、今日はたしかに人間の歩き方になっている。本体を宿へ置いて、遊魂そのものだけが街頭に人を斬って歩く時とは違い、少なくとも人間そのものが、足を大地に踏まえて歩いているように見える。
方二町ばかりの小沼の岸に立った時に、乗鞍《のりくら》ヶ岳《たけ》が、森林の上にその真白な背を現わしました。雪をかぶった乗鞍ヶ岳の背は、名そのままの銀鞍《ぎんあん》です。銀鞍があって白馬はいずこへ行った。それはこれより北に奔逃《ほんとう》して、越後ざかいに姿を隠している。
沼に沿うて銀鞍が再び森に沈んだところに、いわゆる鐙小屋《あぶみごや》があります。
竜之助はこの間お雪に導かれて、ここに来た時のことを思い出しました。
「ねえ、先生、ここに綺麗《きれい》なお池がありますのよ。ごらんなさい、この水の澄んでいて静かなこと、透き通るようですわ。あれ、大きな魚が……山魚《やまめ》でしょうか。おお、つめたい、この水のつめたいことをごらんなさい、
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