、そうして、しかるべき人に見てもらうのが何よりでしょうと思います。今まで何かお作りになりましたか、ここへ来て何かお詠《よ》みになりましたかね、お作があるなら、それを拝見したいものです」
池田は諄々《じゅんじゅん》として答えました。
「二ツ三ツ、詠んでみましたが、とても人様にお目にかけられるような品ではありません」
「遠慮はいけませんよ、出過ぎるのはなおいけませんけれど、人に見られるのを恥かしがっては上達はしません」
「それでは後刻お目にかけましょうが、先生、古人の和歌では、どなたをお手本にしたら、よろしうございましょうか」
「誰を……というのは、ちょっと返答に困りますが、万葉集は読まねばなりません。万葉を御覧になりましたか」
「あ、万葉集はここへ持って参りました」
「それは、よい本をお持ちでした、万葉集一巻あれば、三年この山籠《やまごも》りをしていても、飽きるということはありますまい」
「ですけれども、先生、わたくしには、まだ万葉集の有難味がよくわかりませぬ」
「追々に研究してごらんなさい……私共にもまだまだ、ほんとうに万葉集を読みこなす力は無いのです。この冬仕事にひとつ、お互いにあ
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