いました、あの池田先生は良斎といって、京都では国学の方で指折りの先生だから、よく教えておもらいなさいって……ですから、先生にお願いに上りました」
 お雪からこういわれて、池田良斎先生が頭を掻きました。
「守口の奴、よけいなことをいったものだ、なるほど、少しは国学もやるにはやりましたが、指折りの先生だなんて、いやはや」
「先生、わたくしは和歌《うた》をつくりたいと思っていますけれど、思うように出来ませんが、どうしたらよろしうございましょう」
「それは御同様ですよ。また思うように和歌《うた》が出来た日には、人麿《ひとまろ》や、貫之《つらゆき》が泣きますからね」
「それはそうでしょうけれども、せめて形だけでも、ほんの門の中へ入ってみるだけでもよろしいんです……和歌《うた》を作るには、まずどういう順序で作ったらよろしうございましょう、それからお聞かせ下さいまし」
「そうですね……ああいうものは天分ですからね、上手《じょうず》に手引をしてもらったからといって、またたくさんに本を読んだからといって、よい歌が作れるというわけのものではありませんが……まあ多く古今の人の名作を読み、同時に自分も多く作り
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