眼で見ると愛染明王《あいぜんみょうおう》の相《すがた》だ」
「ふふん」
と今度は主膳が冷笑しました。主膳の冷笑は、敏外のよりもすさまじさがある。しかし、敏外住職は存外まじめで、
「その竪《たて》の一眼は、愛染明王の淫眼といって、ことに意味深い表徴《しるし》になっている」
「ナニ、いんがん[#「いんがん」に傍点]」
「左様」
「どういう字を書くのだ」
「淫は富貴に淫するの淫の字――これは愛染明王が大貪著時代《だいどんじゃくじだい》の拭うても拭いきれない遺品《かたみ》だ。横の両眼は悪心降伏《あくしんごうぶく》の害毒削除の威力を示すが、竪の淫眼のみは、いつでも貪著と、染悪《せんお》と、醜劣と、汚辱《おじょく》とを覗いてやまぬものだ」
「ははあ……」
 神尾主膳は苦笑いしながら、何か当てつけられたように感じました。
 暫くしてこの二人は、久しぶりで一石《いっせき》囲むことになって、おたがいに多忙の心を盤の上に忘れてしまいます。
 当分は、この住職殿も、この屋敷の厄介になることだろう。

 一方、廊下の隅の一間には、裏宿の七兵衛がドッカとみこしを据《す》えてしまいました。
 いつも風のように来て
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