て、千隆寺の境内八葉堂のあたりを中心として、沸くが如き喧騒が、根岸の里の平和を、すっかり破ってしまいました。
火事か、火事ではない、強盗か、いいえ、盗賊でもないそうです。千隆寺へお手が入りました。
ナニ、どうして? お寺で賭博《ばくち》があったのだそうです。そうですか、それはどうも。いいえ、そうではありません、人殺しの凶状持《きょうじょうも》ちが、あのお寺へ逃げ込んだのだそうです。それはこわい――やや遠方まで、人の胆《きも》を冷させたが、この際、自分の家の戸締りをかたくすればとて、出て見ようとする者はありません。
八葉堂を中にした千隆寺の庭では、数多《あまた》の坊主どもが、法衣を剥《は》がれて、例の捕吏《とりて》の手に縛り上げられて、ころがされている。婦人たちが泣き叫んで逃げ迷うのを、これは、さほど手荒なことをしないが、一人も逃さず、本堂へ追い込んで見張りをつけて置く。
なかには、闇にまぎれて裏手から、或いは垣根を越えて、やっと逃げ出したところを、待ち構えていた捕方につかまえられて、有無《うむ》をいわさず、境内へ投げ返された僧侶も、女もある。実際、蟻のはい出る隙間《すきま》もな
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