例の呉竹の小路の間から、足音が聞えました。
また思い出して、神尾主膳が戻って来たな、見つかっては面倒だと、いったん下りて来た七兵衛が、そのまま、松の茂みの間に身をひそめています。
歩いて来たのは二人連れ。神尾主膳が戻って来たのでないことは確かだが、因果なことに、その二人が、御行《おぎょう》の松の根元へ来て、どっかと腰をおろしてしまったことです。
「時に時刻はどうだ」
「まだ少し早かろう」
そのまだ少し早かろうという時間を、ここでつぶそうとするものらしい。
七兵衛が苦《にが》い面《かお》をしました。どのみち、長い時間ではあるまいが、少なくとも、この連中が立退かない限り、この松の上からは下りられない。下なる二人は、かなり落着いて、しかし人を憚《はばか》っての話し声でありましたが、頭の上の七兵衛には、それが手に取るように聞き取れる。
「いったい、その立川流というのは、いつの頃、どこで起り出したものだろう」
「それは、今より八百年ほど昔、武蔵の国、立川というところで起ったのだが、その流行の勢いが烈しきにより、まもなく禁制となったにもかかわらず、ひそかに、その法を行うものが絶えなかったと
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