いるが、めざす千隆寺の庭だけが、特に明るい。
七兵衛が、夜分、遠めの利《き》く眼とはいえ、こうして、上から眺めたんでは、どこにどういう秘密が行われているか、わかるべきはずはない。多分、あの境内《けいだい》に忍び入るには、どの口から向ったのが有利か、それを研究しているのでしょう。
一方、神尾主膳は、槍を片手に、一時は酔眼をみはって、松の上をながめていたが、やがて、酒乱の峠を越したのか、疲れてしまったのか、しきりに眠くなったと見えて、くずおれるように、松の幹によりかかってみたが、ついに支えきれず、根元へ倒れようとして起き直り、きっと足を踏みしめて、何か呟《つぶや》きながら、歩き出しました。
どこへ行くのだろう。多分、屋敷へ引返すのだろうと、松の上から七兵衛は、足もとあぶなく、槍を力に、ふらふらと歩いて行く主膳の姿を、こころもとなく見返っていましたが、それも、まもなく、呉竹《くれたけ》の蔭なる小路《こうじ》に隠れて、見えずなりました。
あとで、ゆっくりと、高見の見物で、千隆寺の境内を隈なく見おろしていた七兵衛。いいかげんの時刻に、ひとり合点《がてん》をして、その松を下りようとすると、
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