十六

 それから二三日すると、どういう相談がまとまったものか、お絹が装いを凝《こ》らして、程遠からぬ同じ根岸の千隆寺へ通いはじめました。
 水野若狭守《みずのわかさのかみ》内、神林某の妻という名義で、幸い、この寺の檀家《だんか》のうちにしかるべき紹介者があったものですから、寺でも待遇が違いました。その当座は多くの婦人の中に交わって、お絹も殊勝に護摩《ごま》の席に連なる。
 住職の僧が存外若いのに驚かされました。年配は神尾主膳と同格でしょう。美僧というほどではないが、色は少々浅黒いが、どこかに愛嬌があって、また食えないところもありそうです。
 で、左右の侍僧がたしか十余人。
 席はいつでもいっぱい。しかもそれが六分通りは婦人。あとの四分も、やはり婦人ではあるが、もう婦人の役を終った老婆連と、そのおともらしい男だけ。
 この若い住職は、印の結びぶりも鮮かだし、お経を読むのもなかなかの美声です。
 ともかく、何の信仰心もなしにやって来たお絹でさえも、その席へ連なっていると、悪い心持はしません。
 それはある日のこと、
「神林の奥様、お急ぎでなくば、今日は書院でお茶を一つ差上げたいと、御前《
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