もある。
 神尾主膳は、そういうことの幾つもの例を手に取るように知っていたから、お絹の今の世間話が、その記憶を残らず蘇《よみがえ》らせて来たもので、それがこの際の謀叛気をそそのかしたものです。
 腹があって、融通がきいて、商売気のある坊主を見つけたいものだ。
 それは、さして難事ではあるまい。清僧を求めるにこそ骨も折れようが、左様な坊主は今時ザラにある――と神尾は、ひとりうなずいてみました。
 どういうつもりか、編笠をかぶって、忍びの体《てい》で、久しぶりで屋敷の中から市中へ向けて神尾が出かけたのは、その翌日のことです。
 昨日《きのう》話に聞いた上野広小路。そこへ立って人の肩から、そっとのぞくと、お絹の話した通り、旗幟《はたのぼり》を立てた坊さんが、物々しく、御本体不動尊の絵像を売っている。その口上も昨日聞いた通り……ただ、昨日の通りでないのが、一通り不動尊の絵像を売り出してから後、改めて、右の頭巾《ずきん》かぶりの坊さんが、その不動尊の絵像を買求めた者に、景品の意味で授ける安産のお守りの効能を、細かく説明していることです。
 右の坊さんは、怪しげな妊娠の原理から説き起して、この安産
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