、僧は俗より出で、俗よりも俗なり、ということをかねて知っていたからです。出家は人間の最上なるもの、王位を捨ててもそれを求むるものさえあるが、坊主の腐ったのときた日には、俗人の腐ったのより更に悪い、図々しくって、慾が深くって、理窟が達者で、弁口がうまくて、女が好きで……それを神尾主膳はよく心得ていたから、この際、堕落坊主をひとつ利用して、何か山を張ってみようと考えついたのです。
 そこで輪廓のうちへ、お絹の顔が、またボーッと浮んで来ました。
 女だわい――谷中《やなか》の延命院の坊主は、寺の内へ密会所を作って、身分ある婦人を多く引入れた。これは終《しま》いがまずかったが、もっと高尚な、巧妙な方法で大奥を動かして、権勢を握った坊主がいくらもある。
 坊主は、比較的に身分ある婦女子にちかより易《やす》い地位にもいるし、お寺参りをするのは、芝居茶屋へ通うよりは人目がよい。
 感応寺の「おみを」は十一代将軍の寵愛《ちょうあい》を蒙《こうむ》って多くの子を生んだ。そのおかげで感応寺は七堂伽藍《しちどうがらん》を建て、大勢の奥女中を犯していた。花園殿もその坊主にだまされて、身代りに女中が自害したこと
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