を利《き》き出されると、つい、とろりとして可愛がってやりたい気になります。そこで、結局、あれもこれも、有耶無耶《うやむや》です。
 やがて、二人|睦《むつ》まじい世間話、
「今の坊さんたちの商売上手には、驚いてしまいました」
「どうして」
「今日、上野の広小路を通りかかりましたところ、坊さんのお説教とばかり思って見ましたら、不動様の御本尊の巻物を売り出しておりましたよ」
「なるほど」
「それもあなた、不動様の功徳《くどく》を述べる口の下から、一巻についていくら、十巻以上は割引……まるで糶売《せりうり》のような景気。でもなかなか売れるようでしたから、ずいぶんお金儲けにもなりましょう。ほんとうに今時の坊さんは商売上手です」
「ははあ」
 この時神尾主膳の耳へは、金儲けという言葉が強く響いて、その金儲けから逆に、お絹の言葉を二度三度思い返しているうちに、ハタと自分の膝をたたきました。
 神尾主膳がハタと膝をたたいたのは、お絹の世間話が暗示となって、こういうことを考えついたのです。
 坊主を利用してやろう――という、ただそれだけのボーッとした謀叛《むほん》の輪廓が浮き上って来ました。というのは
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