そこで、方針をかえて、江戸府内の心あたりを訪ねている。
 今日も、小女を連れたお絹は、湯島の方から上野広小路へ出て、根岸の宅へ帰ろうとしました。広小路の賑やかなところを通って行くうちに、五条天神へはいる角のところで、一人の坊さんが立って頻《しき》りに説教をしている様子を見かけました。聞くともなしに聞くと、
「成田山御本尊のお姿、滅多にはおがめない不動尊御本体のおうつしを、このたび御本山のおゆるしを得て皆様に売り出して上げる、一巻が百と二十文、十巻以上お買求めの方には、一割引として差上げる、滅多にはおがめない成田山御本尊の御影像、一枚が百と二十文、十枚以上お買求めの方には一割引……」
 お絹がそれを聞いて、これはお説教ではないと思いました。
 これはお説教ではない、成田山御本尊の絵姿を売っているのだと思いましたが、その坊さんたちの仰々しい錦襴《きんらん》の装いや、不動明王御本尊と記した旗幟《はたのぼり》が、いかにも景気がよいものですから、お絹も足をとどめて、人の肩からちょっとのぞいて見ますと、中央に僧頭巾をかぶった坊さんが、物々しくいいつづけました、
「勿体《もったい》なくも、成田山御本
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