く帰られたりする時には、むらむらと気が変になることもあるが、今の身ではそれもかれこれということはできない。そういう時には、お絹が必ず多少のみやげを持って来るのだから。そのみやげというのは、つまり、差当って二人の生活になくてはならぬ「金」をどこからか借り出して来るからです。
 こうして神尾は、今のところ、お絹の働きによって養われている有様だが、これは神尾にとって不満であるように、お絹にとっても食い足りない。もっと派手に儲けて、もっと派手に遣《つか》いたい。その時にお絹は、お角のことを思い出して、ひとり腹立たしくなる。何か一やま当てて、あの女の鼻を明かすような働きがしてみたいが、どうも足掻《あが》きがつかない。
 こんな謀叛気《むほんぎ》は、神尾も相当に持っていないではないから、二人は顔を見合わせると、あれかこれかと語り合ってみるが、落着くところは資本《もとで》。まとまった金が土台になければ動きが取れないということになる。
 お絹が駒井甚三郎に当りをつけたのは、最初からのことでしたが、手を廻してみると、駒井は房州の方へ行ってしまったとのこと。房州まで逐《お》いかけて行く気にもなれない。
 
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