尊不動明王のお姿、滅多には拝めない品を、このたび、衆生済度《しゅじょうさいど》のために、あまねく世間に売り出して差上げる、一枚が百と二十文、十枚以上お買求めの方には一割引――なお、この際お申込みの方には特に景品と致しまして――」
 前に、やはり錦襴の帳台を置いて、その上におびただしい絵像の巻物を積み重ねながら、要するに衆生済度のために、不動尊の絵姿を、一般に公開して売下げるという宣伝であります。
 大江戸は広いものですから、これを聞いて有難涙に暮れながら、お姿をいただいて帰るものもあり、なかにはばかばかしがって、山師坊主の堕落ぶりの徹底さかげんを、あざ笑って過ぐるものもあります。お絹も、その光景を見て、なんだか異様に感じました。
 信仰心などは微塵《みじん》もありそうもないこの女。それでも、不動尊の公開売出しには、少しばかり驚かされたものと見える。
 その場は、それだけで、まもなく根岸の里へ帰って来ました。
 神尾主膳はその時、一室に屈託して、今日もしきりに金のことを考えています。ぜひなく両国の女軽業《おんなかるわざ》の親方お角のところへ無心してやろうかとも思いました。あの女ならば話が
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