原でわが子を救うという。
 与八もこのごろ一つ助かることは、お松が来てくれたので、まず児を育てるの心配がなくなったこと。お松は、郁太郎と登を両手に抱えて、かたわら与八の仕事のすべてに後援を与えている。幸いに、近所から子守も来てくれるし、たのめばいつでも人手が借りられる。剣術の道場は、いつか知らず寺小屋となり、学校となり、与八の製作場となる。
 無心で与八が地蔵を刻んでいる時、どうかすると、ふいと気がさして道場の武者窓を見上げることがある。そこから、誰か顔を出しているようでならぬ。
 誰というまでもない、それは女で――
「与八さん、郁坊は無事ですか」
と恨めしい声。
 その時に与八は、郁太郎の母お浜の面影《おもかげ》を思い浮べるのです。どうも、こうして仕事をしている与八のてもとを、お浜が武者窓からのぞいているような気がしてならないのです。
 そういう時に与八が悲しい思いをする。もろもろの罪業《ざいごう》が、みんな自分を中に置いてめぐるように思い出す。この罪業のためには、持てる何物をも放捨して、答えなければならないという心に責められる。
 与八が道場で彫刻をしている時、お松は母屋《おもや》
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