る人が、この二人蓮生に向ってこういう告げ口をしたものさ、熊谷の入道や、宇都宮の入道は無学の者だから、法然様は念仏だけを教えてだましておくんだが、もっと、悧怜《りこう》な人には、もっと高尚な教えを説いて聞かせてるんだ……こういうことを二人の耳へ入れたものがあったからたまらない、二人がムキ[#「ムキ」に傍点]になっておこって、法然様のところまで詰問《きつもん》に出かけ、これも懇々《こんこん》とさとされて引下ったことがある」
「なるほど」
「そうかと思えば、物に触れて無常を感じてみたり、涙を流してみたりするところに美質があるのさ、その無邪気なところをお前さん方、神経質にしてしまってはいけませんよ」
「注意致しましょう」
「それからお前さん方、熊谷様はしの[#「しの」に傍点]党だか、丹《たん》の党だか御存じか」
 若い人たちが煙《けむ》にまかれて聞いているものですから、道庵先生もいい心持になって、やがて、また芝居の方に逆戻りをして、
「熊谷の芝居は嫩軍記《ふたばぐんき》に限ったものさ、あの物語の、さてもさんぬる……で故人|柏莚様《はくえんさま》[#「柏莚様」は底本では「柏筵様」]はこういう型を
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