てしまいました。
「時に、皆様や」
 たまり兼ねた先生が、若いのへ口を出しかけると、先方で、
「何ですか」
「承れば、あなた方は熊谷次郎直実公の事蹟を調べ、演劇にお作りなさるそうですね」
「左様……少しばかり書いてみたいと思って、遊びに来ました」
「それは結構なお心がけで……拙者も、こう見えても芝居の方が大好きでございましてね、ことに熊谷とくると夢中でございます」
「そうですか」
「しかし、あなた方のような血のめぐりのいいお若い方とちがって、この通りの頭でございますから……」
 道庵先生は、ちょっと自分の頭の上へ手をやって、くわい[#「くわい」に傍点]頭を摘《つま》んで見せました。
「どう致しまして」
 若い劇作家連も、道庵の髪の毛をつまんだ手つきを見て、仕方がなしに苦笑いを致しました。
「この通りの頭でございますから、新しいことはあんまり存じませんが、一の谷の芝居はいろいろのを見ましたよ、おめえ方は知りなさるめえ、大柏莚《だいはくえん》を見なすったか」
「いいえ」
「今時は、熊谷といえば、陣屋に限ったようなものだが、組討ちから引込みがいいものさ。わしゃ、渋団《しぶだん》のやるのを見ま
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