ら、私の方から希望を致したいのですが、いかがです、あなたはよくても家族の方が……」
「左様……」
そこで白雲が、家族のことを考えさせられました。この男とても、大空にただよう白雲の如く、行くも、とどまるも、自由には似ているが、自由ではないのが人間の原則です。
浅草の露店の時に伴うていた妻子ある以上は、この人の帰りを待っているに相違ない。この人を柱とも杖ともたよっているに相違ない。
「それはなんとか始末をしておきますよ」
こういう話をしながら、二人は海岸へ出ました。
二十三
武州大宮へ参拝した道庵先生は、それを初縁として、今後沿道の神社という神社には、少々は廻り道をしても参拝して行こうとの案を立てて、有無《うむ》をいわさず、米友にも同意をさせました。
道庵が、こういう敬神思想を発揮するようになったのは、いつもの茶気とばかり見るわけにはゆかない。道庵も実はこのごろ、つくづくと考えさせられているのです。
考えた結果は、どうしても日本国には、敬神思想を普及せしめなければならぬとの確信を得たものらしい。
というのは、道庵も十八文で売り出したり、貧窮組のリーダー気
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