て、外をながめると、ちょうど窓の開いてあったところから、かぎりもない外洋の一部が眼に入って、そこから心地よい海の風の吹いて来るのを感じました。
「これは日蓮自身もいっています――世には王に悪《にく》まるれば民に悪まれない、僧に悪まれる時は俗に味方がある、男に悪まれても女には好まれ、愚痴の人が悪めば智人が愛するといったふうに、どちらかに味方があるものだが、日蓮のように、すべて悪《にく》まれる者は、前代未聞にして後代にあるべしともおぼえず……生年三十二より今年五十四に至るまで、二十余年の間、或いは寺を追い出され、或いは所を追われ、或いは親類を煩《わずら》わされ、或いは夜打ちにあい、或いは合戦にあい、或いは悪口《あっこう》かずを知らず、或いは打たれ、或いは手を負う、或いは弟子を殺され、或いは首を切られんとし、或いは流罪《るざい》両度に及べり、二十余年が間、一時片時も心安き事なし――『日本国ハ皆日蓮ガ敵トナルベシ――恐レテ是ヲ云ハズンバ、地獄ニ落チテ閻魔《えんま》ノ責ヲバ如何《いかん》セン――』これですから堪りません、悪《にく》まれます――しかし、駒井さん、薄っぺらの、雷同の、人気取りの、おた
前へ 次へ
全322ページ中166ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング