辞儀をして出て行ってしまうと、駒井甚三郎は、そのお茶を白雲にすすめ、自分もすすって、
「今の少年が、あれで熱心な切支丹《きりしたん》の信者なのです、イエス・キリストの……」
と言いますと、
「ははあ」
熱している面《かお》をさましながら白雲は、気のあるような、ないような返事。
「あれの語るところによると、イエス・キリストも、また、微賤なる大工の子の出身だといっています、そうしてキリストが、世界の歴史を両分し、人間の心を支配しているのだというようなことをいっています」
「ははあ」
白雲は再び、気のあるような、ないような返事でしたが、急に思い立ったように、
「そうです、そうです。私はキリストのことをよく知りませんけれど、なんにしても西洋の数千年来の文明を指導して来たのですから、そのくらいの抱負はありましょう。日蓮も言っています、『我レ日本ノ柱トナラム。我レ日本ノ眼目トナラム。我レ日本ノ大船トナラム――』これは開目鈔《かいもくしょう》のうちにあります。『日蓮ハ日本国ノ棟梁《とうりよう》ナリ、予《われ》ヲ失フハ日本国ノ柱幢《はしら》ヲ倒スナリ――』これは撰時鈔《せんじしょう》――」
白雲
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