、いちいちの色の変化を現わしたつもり――でなければ現わすつもりでかきました、色ばかりではない、音までも……」
といって白雲は、何か急に悲しい色をその熱した満面に漲《みなぎ》らせ、
「音までも……といいたいのですが、不幸にして、私には辛《かろ》うじて高低の音階の程度だけしか出すことはできません。音律はある程度まで現わし得るかも知れませんが、音相に至っては、今のところ呆然自失《ぼうぜんじしつ》するばかりです。悲しいことです。この悲しさを今回の旅が、つくづくと私に教えてくれました」
 こういった時の白雲の面《かお》は、言おうようなき悲壮なものにうつりましたから、その論旨はわからないながら、その悲壮な色に駒井が動かされました。
 田山白雲は眼の中に涙をさえたたえて、言葉をつづけます、
「私が、浜辺に立って熱心に写生を試みていますと、一人の居士《こじ》が来ていいますことには、田山さん、あなたこの波の音を聞いてどう思いますか……と、こう問われたのです。そこで、ちょっと挨拶に困っていますと、この小湊の浜の波の音は、ところによって違います、あちらの沖で打つ波は、諸法実相と響きます、ここで聞いていると、
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