かずに押しかけて来るところが壮観です。来って物に当ると怒って吼《ほ》えます、そうして、たとい乱離骨灰に崩れても、崩れるその事が壮観たることを失いませぬ。忿怒上部《ふんどじょうぶ》の諸天は、怒りのうちに威相と慈愛とを失わないものですが、波濤の怒りはそれに似ていますな、われわれに壮観を与えて威嚇《いかく》を弄《ろう》さない、戦闘を教えても執念を残さない。巨人の心胸は、さながら怒濤そのもののようです」
 田山白雲はこういって、幾枚も幾枚ものうち、波の怒れる部分だけを取って、駒井の前に積みました。とても筆では間に合わない……といった心持に迫られながら……
 駒井は与えられた絵をいちいち取って、仔細にながめていると、白雲は言葉をついで、
「しかし、海を怒るものとばかり思ってはいけません、歌うものです、泣くものです、笑うものです、また戯《たわむ》るるものです……これを御覧下さい」
と言って白雲は、別に一枚を取って駒井の前にのべながら、
「そうです、海は戯るるものです。戯るるものということを、私は小湊の浜辺でほどよく見たことはありません。御覧下さい、これがその心持をうつしたつもりなのですが、どうして
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