しておいた美人の全身が、妙な旋律を起しながら、胸に物を抱いて、舞を舞うているところが描かれてありました。
暗澹《あんたん》たる燈火の下で、栄之《えいし》の絵にあるような、淋しい気品のある美人が踊っている。その両袖にしかと抱いているのは人形の首――ではない、乾坤山日本寺《けんこんざんにほんじ》の羅漢様の首。ははあ、白雲はあの狂女をつかまえたのだなと駒井が合点《がてん》しました。
風呂から上って、駒井甚三郎の衣裳を着せられた田山白雲の形は、珍妙なものとなりました。それは白雲が大兵《だいひょう》の男であるのに、駒井の普通の丈《たけ》は合わず、ことに着慣れない筒袖が、見た眼よりも着た当人を勝手の悪いものにして、ちょいちょい肩をすぼめてみる形が駒井を笑わせる。
「あれから小湊《こみなと》へ参りました」
白雲は、風呂へ入る以前の岡本兵部の娘の解釈はもう忘れてしまって、早くも話が小湊の浜まで飛んで行きました。
「小湊は、どうでした」
「あそこには長くおりましたよ、十日も逗留《とうりゅう》して、毎日、波ばかり描いていました。これがその波です」
といって白雲は行李《こうり》の中から、また別の画帳一
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