巻と、もう一つはあの家の娘です」
「ははあ」
「仇十洲は御存じの通り、仇英《きゅうえい》のことで、明代《みんだい》四大家の一人です……」
 田山白雲は行李《こうり》を開いて、画帳一冊を駒井の前に置くと、駒井はそれを開いて、まず眼に触れた開頭の文章を読んでみました。
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「仇英、字《あざな》ハ実父、十洲ト号ス、太倉ノ人、呉郡ニ移リ住ム、呉派ノ第一流トイハレシ周東村ニ学ビ、人物鳥獣、山水楼観、旗輩車容ノ類、皆、秀雅鮮麗ト挙ゲラレ、世ニ趙伯駒ノ後身ナリト称セラル、特ニ流麗細巧ヲ極メシ歴史風俗画ニ於テハ艶逸比スベキモノナク、明代工筆ノ第一人者トイフベシ。伝フル所、士女雅宴、楼閣清集等ヲ画ケルモノ多シ……」
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 駒井がそれを読んでいると、白雲は改めていうよう、
「それと、もう一つは岡本兵部の娘です、あれが、なかなかの傑作でした」
「それは、どういう意味でです」
 駒井は画帳を見ながら、岡本兵部の娘の、傑作という文句の意味を問い返すところへ、
「風呂がわきました」
 扉を押して金椎が顔を見せたものですから、駒井は、その方へ向いてうなずいて見せ、次に白雲の
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