ことを、お銀様は言葉をつくして二人に説きました。
 二人は、お銀様のハッキリした語調と、情理ある頼み方に感心しているところへ、お銀様はさいぜん兵馬から受取った路用の全部を、二人の前に提出して、
「これはあの宇津木のために、あなた方がお預かりの上、御自由に処分をなすって下さい」
 仏頂寺と丸山は、眼を見合わせました。

         二十一

 あれから二十日あまりたって、田山白雲は洲崎《すのきき》の駒井甚三郎を訪れました。
「どうです、よい収穫がありましたか」
 駒井から問われて、
「ありました」
「それは結構です。まあ、こちらへ来て、ゆっくりと旅行談をお聞かせ下さい」
 そうして、白雲は、駒井の応接室へ来て、卓《たく》を隔てて椅子に身を載せて相対すると、そこへ金椎《キンツイ》が紅茶と麦のお菓子を持って来て、出て行ってしまいました。
「あなたと別れてから、保田《ほた》へ参りましてな、岡本兵部というものの家へ、取敢えず草鞋《わらじ》をぬぎましたが、そこでまず二つの収穫を得ました」
「そうでしたか、その二つの収穫とは何と何です」
「一つはあの家に秘蔵の仇十洲《きゅうじっしゅう》の回錦図
前へ 次へ
全322ページ中151ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング