に絵馬をかいていたおやじが、大きな眼鏡越しにジロリと兵馬を見て、
「はいはい」
と答えました。
「先生は御在宅でございますか」
「はい」
「御在宅ならばお目通りを致したいものでござります」
「はい、お前さんは何しにおいでになりましたか」
「無眼流指南の表札を拝見致しましたゆえに、先生にお目通りを願って、できることなら、一手の御指南にあずかりたいものと存じまして……」
「なるほど、それは結構なお心がけじゃ……しかし先生と申すのは、恥かしながらこのおやじめのことでござりまする」
「ははあ、あなた様が無眼流の指南をなされますか。それは何より」
兵馬も少し案外に思いましたけれども、事実、こんなのがあるいは隠れたる本当の名人であるかも知れない。名人でないまでも、こういうところに意外な流儀の血統が伝わっているのかも知れない。何か相当の自信がなければ、かりにも一流指南の看板は出せないはずと、少しも軽蔑の色なく慇懃《いんぎん》に挨拶をしますと、おやじ、
「さあ、どうぞお通りなさい」
と言ったが、自分は少しも絵馬描きの手を休めるのではありません。
お通りなさい、といわれ、兵馬は、ちょっとドコへ通って
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