かのように憂えている。できるならばこういう贋物《まがいもの》の黒頭巾を片っぱしからたたききって、少なくとも本物の剣法の見せしめにしてやりたいと腹を立つこともあるのです。
そうして、一蓮寺のさかり場を離れて、また市中へ取って返すと、宿からはいくらもないところの町並に、
「無眼流《むげんりゅう》剣法指南」
の看板を認めました。
それを認めたのは天佑《てんゆう》のようなもので、日中なら、かえって通り過ごしたかも知れません。
無眼流の名は今でこそあまり聞かないが、武術流祖録中に立派に存在する意義ある一流。
町並になっている狭い間口の一方を、少しばかり道場構えにして、一方の畳の上ではしらが頭の一人の爺さんが、絵馬《えま》の中にうずまって、しきりに絵馬をかいている。その絵馬をかくための燈《ともし》の光が、取入れた看板に反射していたものですから、それで兵馬が「無眼流剣法指南」の看板を辛《かろ》うじて認めることができたのです。
無眼流の名を珍しとする兵馬は、ここを素通りすることができないで、
「無眼流の道場というのは、御当家でございますか」
腰をかがめて丁寧にものを訊ねました。
その時
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