れわれ神楽師の、神に対し、人間に対する御奉公も起って来るのでございます。ひとり悪いのは、人間が要求せざるものをほしいままにこしらえて、無理押付けに人間に売ろうとすることであります。それをやるには誘惑を試みなければなりません、剽窃《ひょうせつ》をも試みなければなりません。近代の芸術はそこで堕落が始まりました。かれらは作物《さくぶつ》を模倣し、盗用することは平気です。そうして無用な宣伝と、誘惑と、買収とを以て、人間にその芸術を売りつけようとするのです――われわれは、その芸術商売人ではないつもりですが、御所望なら何か一曲ごらんに入れてもよろしい」
という返事で、後家さんもちょっと二の句がつげません。
 この神楽師の一行は、早々辞し去るかと思うと、案外にも御輿《みこし》を据《す》えて、逗留の気色《けしき》を示しているのも気が知れない一つ。

         十八

 月見寺を出て、甲府の城下についた宇津木兵馬とお銀様。
 甲府は兵馬にとって最も思い出の多いところ。お銀様にとっては故郷も同様のところ。
 城下に宿を取って、その晩、兵馬は、ひとり町を歩いてみました。
 駒井能登守もいなければ、神
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