持後家さんは、若い男につぎ込むのだが、あの婆さんは若い者の生血《いきち》を絞る――若い者だけではない、あの調子だから、目をつけた男は大抵ものにしてしまう。この夏中もどのくらい、聞苦しい噂を聞いたか知れない。そうして現在も……と浅吉は口のあたりをひきつらして、現在にも何か容易ならぬ恨みを持っているのがこらえきれないらしい。お雪はなお一生懸命にそれを慰めて力をつけ、いたわりいたわりして、とにかくも宿の方へと連れて帰りました。
 その帰り道、茶堂橋まで来た時分、お雪は何心なく小梨平の方を仰ぐと、そこの坂道を、こちらへ人の下りて来るのを認めました。同じような笠が揃って四五名、まだ士農工商のいずれともわからないが、こちらへ向いて四五名が隊をなしてやって来る姿が、豆のように見えることは確かです。
 もう、人が入って来ないはずの白骨の温泉。集まった人は、この間、綺麗《きれい》に解散をしてしまったはずの温泉。これから春、雪の解ける時までは、人跡の絶ゆるということを予想していたこの温泉へ、今となって入り込んで来るのは穏かではないようにお雪が感じました。何か特別の目的があり……そうでなければ――お雪がふと
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