した。
 それに反して、浅吉の方の躍起《やっき》となる有様は、日一日と目立ってゆくのです。
 ある時、お雪は湯から上って帰ると、廊下でただならぬ物争いを聞きました。
 それは珍しくも、あの柔順な浅吉が、主人の後家さんを相手に、一生懸命で何事をか言い罵《ののし》っているところです。
 今日も、たくんでした立聞きではありませんが、行きがかり上、耳に入れないわけにはゆかないので、困っていると、
「おかみさん、あなたという人はほんとうに罪な人ですよ……今だから申しますが、先《せん》の旦那様のお亡くなりになった時だって、ずいぶん噂がありましたよ。穀屋《こくや》の家には今でも青い火が出ると、いわない人はありませんからね」
「ナニ、何ですって。人聞きの悪いことをお言いでないよ」
「申しますとも。あなたぐらい、性悪《しょうわる》の、男ったらしの、罪つくりな女はありませんよ。この夏中だってそうでしょう、わたしが見て見ないふり[#「ふり」に傍点]をしていれば……」
「おや、わたしはお前に監督されなけりゃならないのかい、お前が見ているところで、何かしちゃ悪いのかい」
「だッて、少しは遠慮というものがございま
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