されてみると、急に座敷がテレてしまって、なるほど、あの陽気な人が一人いるといないでは、こうも違うものかと思わせられるくらいです。
それでも、お雪は急に暇乞《いとまご》いをして立ち出でるわけにもゆかずに、後家さんの戻るのを待っていたが、その戻るのが意外に手間取《てまど》れるので、もどかしく思いました。多分お手水《ちょうず》にでも行ったのだろうが、それにしては長過ぎるとお雪が待ちあぐむ頃には、浅吉が落着かなくなって、しきりに気を揉んでいる様子が、ありありと見えますから、お雪は、
「おばさん、どうしたんでしょう、帰りが遅い」
いらいらしていた男妾の浅吉は、やがて声を低くして、
「お嬢さん――」
と、お雪のことを呼びました。
「はい」
お雪は、この男にも同情を持っているのです。同情というものは、広い意味の同情で、同情の中に異性の思いやりを含むという次第では無論ありません。いわばお雪は誰に対しても親切な娘であります。
「あなたのお連れのあのお方は、あれはお兄さんですか……」
「いいえ、兄ではありません、親類の……」
とお雪が煮えきらない返事をしました。
「お目が悪いんですね」
と言いますと
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