有難うございました、お邪魔をしてもようございますか」
「よいどころじゃございません、さあ、お入りなさいまし」
「御免下さい」
お雪が入って来ると、後家さんは炬燵の一方へ座蒲団《ざぶとん》を出して、ついでに茶棚の上の蕎麦饅頭《そばまんじゅう》のお盆を炬燵の上へ置きました。つまり、お雪が入って来たために、酒と蕎麦饅頭とが炬燵の上で交迭《こうてつ》した結果になりました。
「一つおつまみなさいな」
「どうも御馳走さま」
三人が炬燵を囲んで世間話がはじまると、やがて先日の木曾踊りのことになり、
「おばさん、まだ、わたしあの歌がよく覚えきれませんから、教えて頂戴な」
後家さんは喜んでお雪に向って、例の「心細いよ、木曾路の旅は、笠に木の葉が舞いかかる」という歌の文句からはじめて、合《あい》の手《て》までも教え、はては自分が得意になって、かなりの美音でうたい出しましたから、一座もなんとなく陽気になってきました。
歌を教えてしまうと、後家さんは、
「踊りはこの人が上手だから、教えておもらいなさい」
と男妾《おとこめかけ》の浅吉を指さしました。
「どうぞ、教えて下さい」
とお雪も、それに合わせて浅
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