らん、なかなかよいところのある方ですよ」
「いいえ、おかみさん……」
といって男妾《おとこめかけ》の浅吉は、唾《つば》を呑み込んで、何かいおうとして、いうのを憚《はばか》りましたが、思い切って、
「おかみさん、あの方は人殺しをした方ですよ、そうに違いありません、私はそばへ寄ってゾッとしました。いいえ、証拠を見たわけじゃありませんが、たしかに人を斬って身を隠すために、こちらへ来ているんですよ、どうしても私にはそうとしか思われません。ですから、あの人のそばへ寄ると、いつも斬られてしまうようにばかり思われてなりません。ですから、おかみさん、あなたも斬られないようになさいまし」
「何をいってるんですよ、この人は……人様をつかまえて、そんなことをいってごろうじろ、それこそ本当に斬られる種をまくようなものじゃないか。わたしぁ、どんな人だってこわいと思わないよ、こっちの出様ひとつじゃないか、出様ひとつでどうにでもなるものだよ」
「ですけれど、おかみさん、あの方は殺すといったら、キッと人を殺しますよ、あの人情につめたい顔の色をごらんなさい」
「ほんとうにどうかしているよ、この人は……誰か、わたしたちを
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