すのは真剣でございます……私はいったい、何を、あなた様に申し上げましたろう、何をおたのみ申したんでしょう」
 一旦、息のつまった男妾はこういって、眼をきょろきょろ[#「きょろきょろ」に傍点]させながら、極度におちつかない心で四方《あたり》を見廻すと、竜之助のかたわらに大小の刀があることが、著《いちじる》しく脅迫的に眼にうつったと見えて、また青くなりました。ほとんど取返しのつかないことをやり出したもののように――
 一切、その狼狽《ろうばい》に取合わない竜之助の冷やかさが、ようやくこの男妾を仰天させました。
「ねえ、あなた様、ただいま、何を申し上げましたか、それは一時の愚痴でございますから、どうかお取消しを願います、お気にさわりましたら、御勘弁下さいまし。なあにほんの取るに足らない色恋の沙汰でございますから、私さえ逃げ出せばそれでいいんでございます。生かすの殺すの、あなた、水の出端《でばな》や主《ぬし》ある間の出来事とは違いまして、生かすの殺すの、そんな野暮なものじゃございません……」
 しかし竜之助は冷罨法《れいあんぽう》を施しつつ答えず。男妾はいても立ってもいられないように、座敷の中
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