そこで、番頭が行ってしまったあと、お雪ちゃんは、まだ何か物足らない面《かお》で、
「お万殿の夜詣りって何でしょう、外へ出ると祟りがあるんですって」
「ナニ、詮索《せんさく》するがものはがあせんよ、土地の習わしですから、郷《ごう》に入《い》っては郷に従えといってね」
「ですけれども、こんな夜更けにわざわざお詣りをなさるお万殿という方も、気が知れない」
「何か因縁があるでがしょうね」
「丑《うし》の刻《とき》詣《まい》りじゃないでしょうか。丑の刻詣りの人に道で行逢うと、祟りがあるっていいますから――」
「ですけれどね、わざわざ先触れをしておいて、丑の刻詣りをする人もないもんじゃありませんか」
「それも、そうですね」
「まあ、なんにしても九ツ半から外へ出さえしなければいいのさ、言われた通りにね」
「なんだか気がかりになるわね」
 久助は触らぬ神に祟りなしの態度を取っているが、お雪ちゃんは腑《ふ》に落ちないものがあって、あきらめきれない。あらためて竜之助に向い、
「先生、御存じですか」
「知らない」
「おかしいわね」
 お雪は首をひねって思案してみたが、
「考えたってわかりゃしませんわ、塵劫
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