記《じんこうき》とはちがうんですもの、土地の人に聞いてみなければ」
「番頭さんが知らないくらいだから、土地の人だって知っちゃいますまいよ」
と久助がいう。
「年寄の物識《ものし》りに尋ねたらわかるでしょう」
「それほど詮索をしなくったって、やっぱり郷に入っては郷に従えですよ、こういう晩には早寝に限ります」
「それもそうですね」
 お雪は、まだ解ききれない塵劫記《じんこうき》の宿題でも残っている心。
 その時、お雪は、ふと行燈《あんどん》の下の暗いところで何物をか認め、
「おや、こんなところに櫛《くし》が落ちているわよ……」
と拾い上げて、
「まあ、二つに割れていることよ」
 お雪の手にしたのは、まだ新しい木曾のお六櫛。
 拾っても悪い、落しても悪いという女の櫛。しかもそれが自分のほかには女のいないこの席に、真二つになって落ちていた。
 お雪はその時、なんとも言えない忌《いや》な気持になりました。

         十一

 この座敷は、それで済まされたが、どうしてもそのままでは済まされない座敷がありました。
「ナニ、九ツ半過から外へ出るな、お万殿の夜詣りがある、それを見ると祟《たた》
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