ぬ柿の木平というところに立っていた猟師の勘八と宇津木兵馬。
勘八が鉄砲の狙《ねら》いをつけると、兵馬は逸《はや》りきった犬の紐をひかえながら、
「まあ、待って見給え、もう少し近寄ってみようではないか」
勘八の切って放とうとしたのは第三発目の鉄砲です。
その第一発を、やはり同じところから発射した時に、賑やかな拍子の音が、パッとたえ、それと同時に、さしも昼間のように明るかったその一団の火がフッと消え、闇の中に、なんとなく谷間が動揺しているようですから、程を見すまして第二発を切って放したが、これは手答えがありません。やがて闇中の動揺も静かになって、一様に空々寂々たる山谷《さんこく》の夜となりましたから、二人はまさしく物につままれたような気分で、なお暫く形勢をみていましたが、用心のため、更にもう一発を切って放ち、そうして、その明りと音のあった方向へ進んでみようというつもりで、勘八が第三発目の狙いをつけたのを兵馬が遮《さえぎ》って、ともかくもこれから探り寄って見ようという。
そこで二人は、わざと火縄をかくし、松明《たいまつ》もつけず、闇にまぎれて、最初の怪しい音と明りの場所をめざして進ん
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